突然、家族や大切な人が姿を消した――。
それは現実味のない出来事のようでいて、ある日、誰の身にも起こりうることです。
とくに鬱病を抱える人の失踪は、ただの家出ではなく、命の危険をはらんだ「静かなSOS」であることが少なくありません。
「何かサインはなかったのか?」「もっと早く気づけたら…」
そう後悔する前に、今すぐ知っておきたいことがあります。
この記事では、失踪の原因から探し方、警察や探偵、SNSなどの活用方法までを、具体的かつ実践的に解説します。
また、家族としてどう向き合えばいいのか、言葉にしづらい心のケアについても丁寧に触れていきます。
誰よりも近くにいたあなたにしか、気づけないサインがあります。
そして、あなたの一歩が、大切な命を救うきっかけになるかもしれません。
1. 鬱病の人が失踪する心理と背景を理解する


① 逃避としての失踪
鬱病の人が突然、家を出て行ってしまうのは、「現実から逃げたい」という気持ちが強くなったからです。
仕事、家庭、人間関係、どれもが重荷に感じて、「このままここにいたら、自分が壊れてしまう」と思い詰めてしまうのです。
鬱状態になると、物事をポジティブに考える力がなくなってしまい、全てが敵に見えたり、未来に希望が持てなかったりします。
そうなると、「どこか遠くに行きたい」「誰にも知られずにいなくなりたい」と感じるのは、決して不自然なことではありません。
特に責任感の強い人ほど、「周りに迷惑をかけたくない」という理由から、誰にも相談せずに姿を消してしまうケースが多いです。
どうして?
それは、自分がここにいるだけで周囲を苦しめていると本気で思ってしまっているからです。
だからこそ、逃げることが“誰かのため”だと信じてしまう。本人にとっては、それが最後の「優しさ」のようなものなんです。
② 自殺願望と失踪の絡み合い
失踪の裏には、明確な「自殺願望」が隠れていることもあります。
「もうこれ以上、頑張れない」「生きている意味が分からない」そう感じたとき、人は静かにどこかへ行ってしまうことがあるのです。
家族や友人に何も言わず、突然いなくなるのは、誰にも止められたくない、邪魔されたくないという心理が働いているからです。
これは、自殺を実行する前段階として、よく見られる行動です。
実際、自殺を考えている人ほど、事前に場所や方法をリサーチしたり、身辺整理をしたりと、“準備”をしていることがあります。
これはある意味、「冷静に死に向かって進んでいる」サインなのです。
どうして?
鬱病の症状のひとつに「死にたいと思う」があります。それは衝動的な感情ではなく、理性的に“この方がいい”と感じてしまっているのです。
失踪は、そうした感情の「静かな叫び」なのかもしれません。
③ 「いなくなりたい」という思いの正体
鬱病の方の中には、「誰かに迷惑をかけている」「自分なんていない方がいい」と、深く思い込んでしまう人が少なくありません。
これは決して性格の問題ではなく、病気によって思考が偏ってしまっている状態です。
本来ならば「そんなことないよ」と言ってくれる人がいても、その言葉すら「気を使わせている」と感じてしまうほど、心のフィルターが変わってしまっているのです。
そうなると、「この世界からいなくなることが、みんなのためになる」と本気で思ってしまいます。そして、その思いが限界を超えると、突然いなくなってしまうのです。
どうして?
「存在するだけで迷惑」と感じてしまっているからです。
現実とはかけ離れたその思い込みが、本人にとっては“絶対的な真実”になってしまっているのです。
④ 失踪前に見られる予兆行動
失踪には、前兆があることが多いです。たとえば、急に身の回りを整理し始める、持ち物を人に譲る、必要以上に過去を振り返るような発言が増える…。
SNSに「疲れた」「誰にも分かってもらえない」「もういいかな」といった投稿をすることもあります。
こうした言動は、本人の心の中で何かしらの“終わり”を意識しているサインかもしれません。
また、急に外出の頻度が増えたり、逆にまったく外に出なくなったりする場合もあります。
どちらも極端な行動の変化として、注意が必要です。
どうして?
失踪は衝動的に見えて、実は“心の中では準備されている行動”であることが多いからです。
小さな変化を見逃さないことが、命を守ることにつながります。
⑤ 家族が感じる“違和感”は命のサイン
「最近、なんか変だな」「前より笑わなくなった気がする」
そんな小さな違和感を覚えたことはありませんか?実は、それこそが最も重要な“サイン”かもしれません。
鬱病の方は、自分の心の状態をうまく言葉にできません。そして、周囲も「きっと大丈夫」と思い込み、声をかけるタイミングを逃してしまいます。
でも、その“いつもと違う空気感”を感じたときこそ、最初のSOSなのです。
「最近、ちょっと元気ないね」その一言だけでも、本人にとっては救いになることがあります。気づいたら、声をかけてください。
どうして?
人は、本当に限界になる前に、無意識に“誰かに気づいてほしい”とサインを出していることが多いからです。
それに気づけるのは、いつもそばにいるあなたしかいません。
2. 失踪直後に家族が取るべき緊急対応


① 警察に“特異行方不明者届”を出す
家族が突然いなくなったとき、まず最初にやるべきことは警察への届け出です。「そのうち帰ってくるかも…」と思いたくなる気持ちは分かります。でも、鬱病や精神的な不調がある場合は、命の危険があると考えて、迷わず警察に相談してください。
このとき、普通の「行方不明届」ではなく、“特異行方不明者届”という分類で届け出ることができます。これは、自殺の可能性がある・認知症などの疾患を持っている・事件に巻き込まれた恐れがあるなど、特別な事情があるケースに適用され、警察が優先的に対応してくれる制度です。
届け出の際には、以下の情報を可能な限り正確に伝えましょう。
- 失踪した日時と場所
- 本人の写真(できれば最近のもの)
- 服装、持ち物、スマホの有無
- 鬱病の診断歴や服薬状況
- 自殺をほのめかす言動があったかどうか
とくに鬱病の症状や自殺のリスクについては、できるだけ具体的に説明しましょう。
「病院に通っていた」「最近、気になる発言をしていた」など、些細に思えることでも大切な情報です。
どうして?
警察が特異行方不明者として扱うかどうかは、“命の危険があるかどうか”で判断されます。
鬱病や自殺のリスクが伝われば、捜索に人員や時間を割いてもらえる可能性が高くなります。
② スマホ・通帳・GPSデータを洗う
警察に届け出た後、家族がすぐにできるのが本人の行動履歴をたどることです。
とくにスマホ、銀行の通帳、クレジットカード、GPS履歴などは、行方不明者の足取りをつかむための非常に貴重な手がかりになります。
スマートフォンには、移動履歴、検索履歴、通話履歴、SNSの投稿やメッセージなど、あらゆる情報が詰まっています。
もし本人がスマホを持ち出していた場合、家族は通話履歴や位置情報共有アプリ(例:iPhoneの「探す」、Googleの「マップタイムライン」など)から、現在地や立ち寄った場所を把握できることがあります。
さらに、銀行口座の出金履歴やキャッシュカードの利用記録も非常に有効です。
どこでお金を使ったか、何を買ったかがわかれば、そのエリアを中心に探すことができます。
また、交通系ICカードの利用履歴(SuicaやICOCAなど)から、電車やバスの乗車駅・降車駅がわかることもあります。
これらの情報は、早ければ早いほど精度が高くなります。
記録が消える前に、可能な限りのデータを確認してください。
どうして?
スマホや通帳の履歴は、言葉を交わせなくなった本人の「無言のメッセージ」です。
行動の痕跡をたどることで、今どこにいるのか、何を考えていたのかを知る大きな手がかりになるからです。
③ 遺書・メモ・SNS履歴を確認する
家族が失踪した直後、もうひとつ確認しておきたいのが、部屋の中や持ち物の中に何かメモや遺書のようなものが残されていないかという点です。
ノート、日記、手紙、スマホのメモアプリなど、普段使っていた場所やアプリの中に、本人の本音が隠されていることがあります。
また、SNSの投稿やDM(ダイレクトメッセージ)にも注目してください。
とくに、X(旧Twitter)やInstagramのストーリー、LINEのタイムラインなど、一時的な投稿機能には、本人の“最後の気持ち”が投稿されている可能性があります。
たとえば以下のような表現が見られた場合は要注意です。
- 「もう疲れた」
- 「どこか遠くへ行きたい」
- 「みんなごめんなさい」
- 「生きている意味が分からない」
- 「ありがとう、さようなら」
これらはすべて、死や失踪を意識した投稿の可能性があります。
本人は直接「死にたい」と言わない場合でも、間接的に“別れ”を告げているケースが非常に多いのです。
誰か特定の相手にだけメッセージを送っている場合もあるため、親しい友人や恋人と連絡を取り、情報を共有してもらうことも重要です。
どうして?
鬱病の方は「直接的な言葉」よりも、「遠回しなサイン」を発することが多いです。
SNSやメモは、本人が誰にも言えなかった心の声を記している場所。だからこそ、その言葉を見逃さないことが、命を守る第一歩になります。
④ 所持品を整理して動きを予想する
家を出て行ったあと、どこへ向かったのかを推測する上で、「何を持って出たか」はとても重要なヒントになります。
財布、スマホ、通帳、衣類、リュック、薬、身分証など、本人がどれを持って行ったのか/置いていったのかをしっかり確認しましょう。
たとえば、財布やスマホ、着替えを持っていったのであれば、ある程度の外泊や移動を想定していた可能性があります。
逆に、身分証や通帳、薬など、生活に必要なものをすべて置いたままだとしたら、突発的な失踪、あるいは衝動的な行動の可能性も考えられます。
また、所持品をチェックする際には、普段から大事にしていたものが含まれているかも見てください。
思い出の品や日記、写真などを持ち出している場合は、気持ちの整理をしようとしているサインであることもあります。
さらに、持ち物の中に地図や目的地を書いたメモなどが挟まっていないかもチェックしましょう。
「〇〇に行きたい」「△△に行ってみたい」など、以前に話していた場所とリンクしていれば、行き先を特定できる大きなヒントになります。
どうして?
人は「何を持って行くか」に、その時の心理状態が表れます。計画的な失踪か、衝動的な行動か、誰かに会いに行ったのか――。
所持品は、本人が今どこで何をしているかを予測するための“手がかりの地図”なのです。
⑤ 捜索の記録をきちんと取る
失踪後は、家族として感情が不安定になるのは当然です。
「どこに行ったんだろう」「なぜこんなことに」——
そんな思いで頭がいっぱいになり、気がつけば、あちこち探し回っている。
でも、そんなときこそ大切なのが、冷静に“記録を取る”ことです。
「いつ」「どこを」「誰と」「何を目的に」探したか——これを簡単にでもメモしておくことで、重複や見落としを防ぐことができます。
また、警察や探偵、友人たちと連携する際に「今ここまで調べてある」と共有できるので、二度手間を減らし、捜索のスピードを上げることにもつながります。
さらに、「〇〇の公園を見に行ったけどいなかった」「〇〇駅周辺を夜7時に確認」など、時間帯と場所をセットで記録すると、あとで行動パターンの分析にも役立ちます。
可能であれば、Googleスプレッドシートやメモアプリなど、家族間で共有できる形にしておくと安心です。
感情的に疲れてしまうのは当然ですが、こうした記録をつけることが、「やれることは全部やった」と思える安心感にもつながります。
どうして?
記録を残すことは、感情の整理と冷静な判断のための「道しるべ」になります。
見つけたい一心で動き回る中、あとで「何をやって、何がまだなのか」を可視化することが、命をつなぐ行動に変わっていくのです。
3. 鬱病の失踪者が向かいやすい場所と探し方


① 自然の多い場所:山・川・公園など
失踪した人が最初に向かいやすいのが、自然に囲まれた静かな場所です。
山、河原、湖畔、海辺、田舎の公園など、「人が少なくて落ち着ける場所」を本能的に選ぶ傾向があります。
なぜなら、誰にも会わずにひとりになれる空間を求めているからです。
とくに鬱病で思いつめている場合、人と会うのが怖くなったり、「迷惑をかけたくないからひとりでいよう」と考えることがあります。
自然の中に身を置くのは、自分の気持ちを整理したい、あるいは最期の時間を静かに過ごしたいという心理のあらわれでもあるのです。
近くにそういった場所があるなら、早い段階で捜索する価値が非常に高いです。
とくに、過去に「ここ好きだな」と話していた場所や、思い出のある公園、河川敷、山道などがあれば、ピンポイントで訪れてみてください。
朝方や夕暮れ、人気のない時間帯に出かけていることもあるので、時間帯を変えて何度か確認してみるのも有効です。
どうして?
自然の中は“自分の存在をかき消してくれる”ように感じられることがあります。
静けさや孤独感が、今の心の状態とリンクしやすいため、苦しいときほどそうした場所に引き寄せられてしまうのです。
② ネットカフェ・カプセルホテル
鬱病で失踪した方が、比較的多く利用するのがネットカフェやカプセルホテルです。
こうした施設は匿名性が高く、長時間いても怪しまれにくいため、心を閉ざしている人にとっては“ちょうどいい隠れ場所”になるのです。
特に都市部では、24時間営業のネットカフェやシャワー付きのカプセルホテルが多く存在し、生活の場として数日〜1週間ほど潜伏するケースも少なくありません。
お金が尽きるまではそこで静かに過ごし、外部との接触を絶っていることもあります。
また、スマートフォンで調べた情報からすぐに予約できるため、計画的にこうした施設を利用している場合もあるのが現実です。
特に、普段から一人で行動するタイプの方や、会社帰りによく立ち寄っていた場所がある人なら、行きつけのチェーンやエリアに向かった可能性もあります。
実際に探すときは、市内の主要駅周辺や繁華街の近くにあるネットカフェ、カプセルホテル、24時間営業の漫画喫茶などをリストアップし、片っ端から連絡や訪問をして確認することが有効です。
また、本人のクレジットカードやICカードの利用履歴があれば、どの施設に入ったのかが分かる可能性もあります。できるだけ早くデータを確認しましょう。
どうして?
ネットカフェやカプセルホテルは、誰にも干渉されず、最低限の生活ができる“仮の避難所”として最適だからです。
人と会わずに過ごしたい…という心理が強いとき、自然とこうした場所を選んでしまうのです。
③ 思い出の場所や馴染みのあるエリア
人は心が限界を迎えたとき、無意識に「安心できる場所」「自分らしさを取り戻せる場所」を求める傾向があります。
鬱病を抱えた人が失踪したときにも、昔よく行っていた場所、青春時代を過ごした町、家族と行った思い出の場所などに向かうケースが少なくありません。
例えば…
- かつての母校や通学路
- 初めて一人暮らしをした街
- 昔の恋人と過ごしたカフェ
- 子ども時代によく遊んだ公園
- 家族旅行で訪れた観光地
こうした場所は心の記憶と深く結びついているため、何も考えずに足を運びたくなることがあります。
とくに「もう一度だけ見たかった」「最後にあそこへ行っておきたかった」という気持ちから、移動手段を使って遠方まで行ってしまうこともあります。
家族としては、普段の会話の中で本人が話していた場所や、「前に行きたいと言っていた場所」を思い出してみてください。
「なぜ急にそんな場所に?」と思うような場所でも、本人にとっては心の避難所になっていることがあります。
地域が特定できる場合は、現地の警察署や駅、バス会社にも問い合わせをして、目撃情報がないかを確認しましょう。
どうして?
記憶の中の「安心できた時間」に戻りたいという気持ちが、思い出の場所へと導きます。
孤独や不安で心が押しつぶされそうなとき、人は“原点”に立ち返ろうとするのです。
④ 駅や線路沿い、鉄道終着駅など
意外かもしれませんが、失踪した人が向かう場所として多いのが鉄道の駅や終着駅、線路沿いです。
鬱病の方の場合、「遠くへ行きたい」「知らない場所に逃げたい」という衝動から、とりあえず電車に乗って終点まで向かうことがあります。
特に大都市のターミナル駅や、新幹線・特急列車の発着する終着駅は、“どこへでも行けそうな自由さ”を感じさせる場所でもあり、心が不安定なときに惹かれてしまう傾向があります。
また、残念ながら、線路沿いや人のいない踏切周辺などを選んでしまうケースもあります。
これは、非常にデリケートで触れにくい話ですが、自殺願望と結びついている可能性もあるため、早期の確認が重要です。
もし本人が鉄道ファンだったり、よく電車を利用していたのであれば、なおさら駅周辺の捜索を優先してください。
ICカードの履歴から、いつどの駅で乗り降りしたかが分かる場合もあります。
終着駅や線路の終点は、旅の終わり=人生の区切りを無意識に感じさせる場所です。特に鬱の症状が強く出ている場合、本人の心情とリンクしていることがあります。
どうして?
「どこか知らない場所へ行きたい」「このまま消えてしまいたい」――そんな思いが、電車という“移動手段”と結びつきます。
駅や線路は、心の行き場を探している人にとって“境界線”のような場所なのです。
⑤ 神社・お墓・宗教施設など静かな場所
心が深く沈んでいるとき、人は静寂と向き合える場所を求めます。
鬱病の失踪者が向かいやすい場所として、神社、寺、お墓、礼拝堂、教会などの宗教施設が挙げられます。
これらの場所には、共通して「人の気配はあるが、干渉されにくい」という特徴があります。
心が疲れきった状態で、誰にも見られずに、でも完全に孤独ではない空間を選ぶ――それが神社や寺のような場所なのです。
また、故人のお墓を訪れるケースも多く見られます。
「亡くなった家族に話を聞いてほしかった」「もう一度だけ顔を見たかった」など、精神的なつながりを求めて行く場所として、お墓を訪ねる人も少なくありません。
本人が以前に信仰していた宗教がある場合、その教会やお堂へ向かっている可能性もあります。
たとえば、地域の〇〇神社、子どものころ通っていたお寺、近所の無人の祠など、人目が少なく、自分と向き合える場所を無意識に選ぶのです。
神社やお墓などの施設は、周囲が木々に囲まれ、外から見えにくい場所が多いため、捜索の際は細かく歩いて確認することをおすすめします。
どうして?
静かな場所は、自分の気持ちと向き合える「心の避難所」として選ばれます。
特に神社やお墓は、安心感や懐かしさ、そして“終わり”を象徴する場所でもあり、心が疲れているときに強く引き寄せられてしまうのです。
4. 見つかった後にやってはいけない対応


① 「どうしてこんなことしたの?」と責める
家族が突然失踪したあと、ようやく見つかって戻ってきた――
そのとき、ほっとする一方で、どうしても口をついて出てしまう言葉が、「なんでこんなことしたの?」「どれだけ心配したと思ってるの!」といった“責める言葉”です。
でもこれは、本人にとって心をえぐる刃になってしまいます。
本人は、自分がいなくなったことで周囲がどれだけ傷ついたか、すでに十分すぎるほどわかっているのです。
その罪悪感に耐えられなくなったことが、失踪という行動につながっている場合もあります。
そこにさらに責める言葉が加わると、「やっぱり自分はダメな人間なんだ」「居場所なんてない」と強く思い込み、再び失踪を繰り返す・自傷行為を起こすリスクさえあるのです。
もちろん、心配した気持ちや悲しみを伝えたいのは当然のこと。
ですが、最初の声かけは「帰ってきてくれて本当にありがとう」「無事でよかった」という、無条件の安心感を与える言葉にとどめてください。
感情的になってしまいそうなときは、深呼吸をして、一度だけでも気持ちを飲み込むことが、相手の心を守ることにつながります。
どうして?
責める言葉は、相手を“さらに孤独にする”危険があります。言葉ひとつで、「自分は必要とされていない」と感じさせてしまう。
それが次の失踪や最悪の選択につながらないように、まずは受け止めてあげることが大切なのです。
② 安心したことで普段通りの生活に戻す
無事に家族が戻ってきたとき、心の底から「よかった」と思うのは自然なことです。
ただ、その安心感からすぐに普段通りの生活に戻してしまうのは、とても危険です。
鬱病の失踪者は、戻ってきたからといって心が回復しているわけではありません。
むしろ「帰ってきてしまった」「また迷惑をかけている」と強く自分を責めている場合も多く、心は極度に疲弊しています。
その状態で、仕事や学校、家事などを「いつも通りにやろうね」と促されると、本人の心はさらに追い詰められてしまうことがあります。
表面上は笑っていても、心の奥では「やっぱり自分はここにいるべきじゃない」と感じていることも少なくありません。
まずは“休むことが許される環境”を整えてあげることが大切です。
「しばらく休んでいいんだよ」「今は何もしなくていいからね」という言葉が、本人にとっての安全な空間になります。
また、必要であれば医療機関やカウンセラーと連携して、回復のステップを専門家と一緒に考えることも有効です。
「元の生活に戻す」ではなく、「本人が安心できるペースに合わせる」という視点が大切です。
どうして?
失踪から帰ってきた直後は「見つかった=解決」ではなく「ようやくスタート地点に戻った」状態です。
心の回復には時間がかかります。焦らず、その人のペースを尊重することが、再び失踪を防ぐカギなのです。
③ 「自分の気持ちを話して」と急かす
家族が突然いなくなって戻ってきたとき、気になるのは「なぜ?」「何があったの?」という気持ちです。
「どうしても理由を知りたい」「本人の気持ちを理解したい」と思うあまり、「何があったの?」「話してくれないと分からないよ」と、つい問い詰めてしまうことがあります。
でも実は、それは本人の心をさらに閉ざしてしまう言葉なんです。
鬱病の状態にある人は、自分の感情や思考を整理する力が極端に落ちているため、「何がつらいのか」を言葉にすること自体が苦痛になっています。
その状態で「気持ちを話して」と急かされると、「話せない自分はやっぱりダメだ」「うまく説明できないから迷惑だ」と感じてしまい、ますます心を閉ざしてしまうのです。
大切なのは、話してくれるのを待つ姿勢です。
無理に言葉を引き出そうとせず、「いつでも話したくなったら聞くからね」というスタンスで、安心できる空気をつくってあげることが何よりも大切です。
そして、ほんの一言でも言葉が出てきたときは、途中でさえぎらず、最後まで聞くことを意識しましょう。
理解できなくても、「そうだったんだね」「話してくれてありがとう」と受け止める姿勢が、信頼を取り戻す大きな一歩になります。
どうして?
鬱病のときは「話すこと」そのものが大きな負担になります。
気持ちを言葉にできるようになるには、“安心できる時間”と“聴いてくれる人がいる安心感”が必要なのです。焦らず、信じて待ってあげてください。
④ 自宅で一人にしてしまう
「とりあえず無事に戻ってきてくれたし、少し休ませてあげよう」――この気遣い自体は素晴らしいことです。
でも、完全に一人きりにしてしまうのは、場合によっては非常に危険です。
鬱病の人は、ひとりになるとマイナス思考が強まりやすく、不安や後悔がぐるぐると頭を巡り始めます。
「また迷惑をかけてしまった」「帰ってきた意味があるのかな」など、自分を責める思考がエスカレートしてしまうのです。
特に失踪直後の数日間は、精神状態が非常に不安定です。
表面上は落ち着いて見えても、再び失踪を考えたり、自傷・自殺を試みてしまうこともあります。
そのため、可能な限りそばに誰かがいる状況を作ることが重要です。
とはいえ、ずっと話しかけたり、干渉する必要はありません。
ただ同じ空間にいて、「いつでも話せる」「見守ってくれている」という空気を作っておくだけでも、心の安心感につながります。
どうしても家族が不在になってしまう場合は、友人や信頼できる第三者に付き添ってもらう、医療機関に一時的に相談するといった対応も検討してみてください。
どうして?
ひとりの時間は「休息」ではなく、「孤独」になってしまうことがあります。
とくに鬱病の状態では、自分を責める思考が止まらなくなり、再び危険な行動に出てしまう可能性があるからこそ、見守りが必要なのです。
⑤ 本人の意思を尊重しすぎる
「本人が嫌がることはしたくない」「そっとしておいてあげたい」――家族としてその気持ちはとても自然で、優しさから出るものです。
しかし、鬱病による失踪から戻ってきた直後は、本人の意思をそのまま尊重しすぎることが、逆に命の危険を高めることがあります。
鬱病の人は、自分の状態を冷静に判断できなくなっていることが多く、「もう迷惑をかけないように…」と考え、再び家を出ようとすることも少なくありません。
「一人で大丈夫だから」「心配しないで」という言葉をそのまま受け止めてしまうと、再失踪のリスクが高まります。
もちろん、本人のプライバシーや気持ちを大切にすることは重要です。
ただし、“安全を確保する”ことは、最優先の課題であることを忘れないでください。
そのためには、周囲の見守りや専門家との連携が不可欠です。
「あなたのことが心配だから、今は一緒にいさせてね」といった言葉は、押し付けではなく“安心感”を伝えるメッセージになります。
本人の意思を尊重しつつも、命を守るための最小限のサポートラインを作っておくことが大切です。
たとえば、通院の同行や、生活リズムを整えるサポートなどは、本人の負担を減らし、同時に家族が状態を把握できる手段にもなります。
「干渉」ではなく「見守り」として寄り添うことが、再失踪や自殺防止に直結します。
どうして?
鬱病の人は、自分の安全よりも「他人に迷惑をかけないこと」を優先してしまう傾向があります。
そのため本人の「大丈夫」という言葉は、本心ではないことが多いのです。だからこそ、“優しい見守り”が必要なのです。
5. 失踪後の迅速な捜索マニュアル:家族がすべき行動とは?


① すぐに警察へ“特異行方不明者届”を出す
失踪したと気づいた瞬間、一番にやるべきことは警察への届け出です。
「まだ帰ってくるかもしれない」「通報するのは大げさかな…」と迷っている間に、時間がどんどん過ぎてしまいます。
1分1秒でも早く届け出ることが、生存率に直結するのです。
とくに精神疾患のある方や、自殺の恐れがあるケースでは、“特異行方不明者”として扱ってもらえる可能性があります。
これは、通常よりも優先度の高い捜索をしてもらえる制度です。
届け出の際に準備しておくとスムーズなのは以下の通りです。
参考
- 顔写真(できれば最近のもの)
- 身長・体重・髪型・服装などの特徴
- 失踪時に所持していた物(スマホ・財布・通帳など)
- 服薬の有無や病歴(特に鬱病)
- 失踪の直前にあった出来事や言動
これらの情報が揃っていれば、警察はすぐに捜索体制を整えることができます。
可能であれば、スマホのGPS履歴や通帳の動きなど、行動のヒントになる情報も一緒に伝えましょう。
どうして?
警察が“本格的に動くかどうか”は、届出内容の具体性と緊急性で決まります。
命の危険があると判断されれば、早期の捜索が可能になります。だからこそ、届出は「迷う前に出す」が鉄則なのです。
② 本人のスマホ・PC・SNSの情報を確認
失踪後、警察への届け出と同時に進めたいのが、本人のスマートフォンやパソコン、SNSの履歴を確認することです。
とくに鬱病の方は、失踪前に「ネット上で何かしらのサイン」を出しているケースが非常に多いのです。
まずは位置情報アプリやGoogleマップのタイムラインなどを確認して、最近の移動履歴がないかを探します。
iPhoneなら「探す」アプリ、Androidなら「デバイスを探す」で、現在地や最後のログイン地点が分かる場合があります。
さらに、LINEやX(旧Twitter)、Instagram、FacebookなどのSNS履歴をチェックしてください。
「疲れた」「消えたい」「もういいかな」などの投稿や、特定の相手に意味深なDMを送っていた形跡があれば、心理状態のヒントになります。
また、検索履歴やアクセス履歴も重要です。
「〇〇県 自殺名所」「一人で泊まれる 安いホテル」など、失踪先を示唆するような検索がある場合は、場所を特定する大きなヒントになります。
本人のスマホにロックがかかっていて開けない場合でも、家族のスマホに残っているメッセージや通話履歴を確認し、誰と最後にやり取りしていたのかを探ることができます。
どうして?
鬱病の方の失踪には「ネット上の痕跡」が残っていることが多いからです。
話せない想いを、SNSや検索に託している場合もあります。言葉では出せなかった“助けて”が、画面の中に隠されているかもしれません。
③ よく行く場所・思い出の場所をリストアップ
失踪者を探すとき、最も効果的なのが「その人が心地よいと感じる場所」「思い入れのある場所」を絞り込んでいくことです。
これは特に鬱病の失踪者にとって、居場所を予測する大きなカギとなります。
まずは、家族や友人と話し合いながら、次のような場所をリストアップしてみましょう。
- 昔よく行っていたカフェや公園
- 学生時代の通学路や母校周辺
- 旅行で感動していた観光地
- 特別な記憶のある神社やお墓
- ひとりになれるお気に入りの場所(展望台、河川敷など)
これらは、心が追い詰められたときに「最後にもう一度行っておきたい」「ひとりで過ごしたい」という気持ちから向かう傾向があります。
思い出をたどるような場所は、本人にとって“静かに感情を整理できる場所”なのです。
また、「〇〇に行ってみたい」「いつかまた△△を歩いてみたい」といった普段の何気ない会話にもヒントが隠れていることがあります。
本人の“好きだったもの”“心が動いた瞬間”を思い出してみてください。
リストアップした場所は、地図アプリなどで一括で表示すると、効率よく巡回しながら探すことができます。
家族間で共有すれば、手分けして捜索もしやすくなります。
どうして?
鬱病の人は「感情が落ち着く場所」を本能的に探します。
その場所は、過去の記憶や安心感と深く結びついているため、普段の会話や行動パターンを手がかりに、心のよりどころを探ることが発見への近道になります。
④ 金銭の動きや交通機関の利用履歴を追う
失踪者がどこに向かったのかを知るうえで、最も有力な手がかりになるのが、お金と移動手段の履歴です。
「どこで」「何に」「どのくらい使ったか」を確認することで、失踪後の足取りを追うことができます。
まずは、本人が使っている銀行口座の出入金履歴を確認してみましょう。
たとえば、○月○日 14:20「〇〇駅前ATMで1万円引き出し」などの記録があれば、その場所と時間にいたことが確定します。
また、SuicaやPASMO、ICOCAなどの交通系ICカードの履歴も非常に有効です。
最近では、スマホのアプリや会員ページから乗車・降車の駅名や時刻が簡単に確認できる場合が多くあります。
他にも、クレジットカードの使用履歴から、コンビニやネットカフェ、宿泊施設などの利用が判明するケースもあります。
「〇〇ホテルに○月○日に宿泊」などの情報があれば、地域をピンポイントで絞ることも可能です。
こうした情報は、警察に提出すれば捜索の効率を一気に高めることができます。
普段から本人のキャッシュレス利用状況をある程度把握しておくと、いざというときにも冷静に対応できます。
どうして?
お金や交通履歴は「その人の居場所を示す足跡」です。
感情や言葉では探れない部分も、数字と場所の記録からたどれば“今どこにいるか”のヒントが得られます。冷静に記録を確認することが発見への近道です。
⑤ 家族・友人・職場への連絡と情報共有
「人に迷惑をかけたくない」「まだ帰ってくるかもしれない」――そう思って、家族だけで抱え込んでしまう方も多くいます。
ですが、失踪がわかったら、できるだけ早く本人と関わりのある人たちに連絡・共有することがとても大切です。
特に、職場・学校・友人関係・近隣住民などは、本人がふだん何気なく通っている場所や心を許していた相手とつながっている可能性があります。
ちょっとした情報が、発見の決定打になることもあるのです。
たとえば…
- 「数日前、〇〇駅で見かけたよ」
- 「こんなLINEが最後に来た」
- 「元気がなさそうだったから心配してた」
こうした情報は、家族だけでは知り得なかった状況を知る手がかりになります。
また、本人が連絡を取る可能性のある人にあらかじめ事情を話しておけば、連絡が来たときにすぐ家族へ伝える連携が取れます。
注意したいのは、本人のプライバシーと尊厳を守ること。
職場などに連絡するときは、「体調不良により一時的に連絡が取れない」など、配慮のある表現を使うようにしましょう。
どうして?
失踪時、本人の情報を最も多く持っているのは「家族以外の誰か」のこともあります。
情報は、発見の最短ルート。遠慮せず、信頼できる人たちに協力をお願いすることが、命を守る一歩につながります。
6. 警察・探偵・SNSなどの活用方法と注意点


① 警察への届け出で優先される条件とは
警察が失踪者を「緊急性の高い案件」として本格的に動いてくれるかどうかは、届け出の内容と状況で大きく左右されます。
特に重要なのが、「特異行方不明者」として受理されるかどうかです。
特異行方不明者(とくいゆくえふめいしゃ)とは、命の危険がある可能性がある失踪と判断された人のこと。
この判断がされると、警察は迅速かつ優先的に捜索を開始してくれます。
では、どういうケースが「特異」と見なされやすいのか? 以下の条件に当てはまると、優先度が高くなります。
参考
- 精神疾患(特に鬱病や統合失調症など)がある
- 自殺願望や希死念慮が見られた
- 高齢者や未成年者である
- 持病・服薬の必要がある
- 失踪直前に不穏な言動があった
これらの情報は、届け出時にできるだけ具体的に伝えることが重要です。
「昨日、『死にたい』と漏らしていた」「処方薬を持たずに家を出た」など、“緊急性”を強く伝えることで、警察の対応が変わってきます。
また、届け出は本人の住所地だけでなく、家族の最寄りの警察署でも可能です。
提出後、警察署ごとに情報が共有され、各地に連絡網が広がっていくので、できるだけ早く、正確に届けることが発見のカギとなります。
どうして?
警察が“特異行方不明者”と判断すれば、緊急の捜索チームが動きます。
命に関わる可能性をきちんと伝えることで、迅速な対応を引き出すことができるのです。
② 探偵に依頼する場合の費用とメリット
警察に届け出を出しても、「動いてくれない」「時間がかかる」と感じたとき、もうひとつの選択肢として検討されるのが探偵への依頼です。
探偵は民間の調査業者で、家出人・失踪者の調査を専門に行っているところも多くあります。
では、実際に探偵に依頼した場合、どのくらいの費用がかかるのか? 気になるポイントですよね。
調査内容 | 相場価格(目安) |
---|---|
簡易な情報調査(SNSやネット履歴など) | 5万〜10万円 |
聞き込み・張り込み・尾行 | 15万〜50万円 |
長期調査(1週間〜) | 50万円〜100万円以上 |
費用は業者や地域、調査期間によって大きく変動しますが、「成功報酬型」や「成果報告型」の料金体系を採用している探偵社もあります。
契約前には、必ず見積もりを取り、契約内容をよく確認しましょう。
探偵に依頼する最大のメリットは、即時に動ける機動力と柔軟性です。
警察のような制限がないため、張り込みや尾行、周辺への聞き込みなど、細やかな現場調査が可能です。
また、調査会社によってはネットカフェ・ビジネスホテル・交通機関の聞き込みに特化しているところもあり、本人が滞在していそうな場所を重点的に洗い出すことができます。
どうして?
探偵は「今すぐに動いてくれる」数少ない選択肢です。特に警察の動きが遅いと感じたとき、民間の調査力が発見の突破口になることがあります。
ただし、高額になる場合もあるため、事前の確認が必須です。
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③ SNSで拡散する際のテンプレと注意点
現代の捜索において、SNSは非常に強力なツールです。
Twitter(X)やInstagram、Facebookなどで情報を拡散することで、想像以上のスピードと広がりで目撃情報が集まることがあります。
ただし、やみくもに投稿するのではなく、正確かつ冷静な情報の整理が大切です。
以下は、失踪者の情報をSNSで発信する際のテンプレートです。
【家族が失踪しました。情報を求めています】 ・名前:佐藤 太一(さとう たいち) ・年齢:34歳 ・性別:男性 ・身長:約170cm/痩せ型 ・服装:紺色のパーカー、黒いリュック ・失踪日時:2025年9月25日(午前10時ごろ) ・最後に確認された場所:東京都杉並区 高円寺駅付近 ・特徴:鬱病治療中/眼鏡を着用 ・連絡先:080-XXXX-XXXX(ご家族対応) ※発見につながる情報があれば、DMまたはお電話をお願いします。 #拡散希望 #行方不明 #家族探し
上記のように、「誰が」「いつ」「どこで」「どんな状態でいなくなったか」を簡潔かつ具体的にまとめることで、読んだ人が協力しやすくなります。
【注意点】としては、以下の点にご注意ください。
- 誹謗中傷につながる表現は避ける
- 住所や電話番号などの個人情報は、最小限に
- デマ情報に惑わされず、情報提供者に確認を取る
- 無関係な第三者の顔や名前を載せない
また、情報が拡散された後も、進展があれば必ず投稿を更新しましょう。
「見つかりました」「引き続き捜索中です」といった更新があれば、支援してくれる人の信頼にもつながります。
どうして?
SNSは“見知らぬ誰かの目”を味方につける大きな力です。
ただし、情報の信頼性やプライバシー保護を軽視すると、逆効果になることも。正確で冷静な発信が、協力の輪を広げる第一歩になります。
④ チラシ・ポスターを地域で配布する方法
SNSの拡散と同時に有効なのが、地域密着の「紙のチラシ・ポスター」です。
実際、ポスターを見た人からの通報で発見につながったケースも少なくありません。
まずは、失踪者の写真・特徴・失踪日時・場所・連絡先を1枚にまとめたチラシを作成しましょう。
印刷は家庭用プリンターでも構いませんが、コンビニのコピー機やネット印刷を利用すると、短時間で大量に用意できます。
効果的な掲載内容の一例はこちらです。
参考
- 最近の顔写真(顔がはっきり写っているもの)
- 服装・髪型・身長・体型などの特徴
- 失踪日と場所、時間帯
- 精神疾患の有無(伝えて問題ない範囲で)
- ご家族の連絡先(電話番号 or 捜索専用メール)
チラシができたら、以下のような場所に配布・掲示の許可を取りましょう。
掲示場所 | 注意点 |
---|---|
交番・警察署 | 必ず事前に許可を取る |
駅の掲示板 | 駅員や管理事務所に申請 |
コンビニ・スーパー | 店長など責任者に相談 |
地域の公民館や図書館 | 地域住民が目にする場所 |
飲食店や美容室 | 本人が立ち寄る可能性あり |
また、配布用チラシは、ポスティングや街頭配布も効果的です。
その際は、「ご協力ありがとうございます。情報がありましたらご連絡ください」と、丁寧な言葉と感謝の気持ちを添えると、受け取ってもらいやすくなります。
どうして?
目に見える「紙の情報」は、意外なところで誰かの記憶を呼び起こします。
近所のお店や通勤途中に貼られたポスターが、“あの日見かけたかも”という手がかりにつながることも。地域の目を信じて活用しましょう。
⑤ メディアの協力を仰ぐときのコツ
失踪から時間が経っても見つからない場合、テレビ・新聞・ラジオ・地域情報誌など、メディアの力を借りることも有効な手段です。
特に地方では、テレビやラジオの影響力が今も根強く、「見た」という声が集まりやすいという利点があります。
メディアに協力を求める際は、次のような準備があるとスムーズです。
参考
- 失踪者の情報(名前、年齢、特徴、顔写真)
- 失踪日時と場所、直前の様子
- ご家族の思いやコメント(手書きメッセージも効果的)
- 連絡先と「どこに連絡すればよいか」の明示
また、連絡先となるメディア(地域テレビ局、新聞社、ラジオ局)にメールまたは電話で連絡する際は、“報道協力をお願いしたい”という丁寧な依頼文を添えましょう。
【件名】行方不明者の報道協力のお願い(佐藤太一・34歳) 〇〇新聞社 御中 突然のご連絡失礼いたします。私の弟、佐藤太一(34歳)が2025年9月25日より行方不明になっており、現在警察にも捜索をお願いしています。 ですが、有力な手がかりが得られず、地域の皆様のお力をお借りしたく、報道のご協力をお願いしたくご連絡いたしました。 詳細資料と写真を添付しておりますので、ご検討いただけますと幸いです。 何卒よろしくお願い申し上げます。 佐藤 花子(姉) 080-XXXX-XXXX
【注意点】として、メディアの影響力は大きい一方で、誤った情報が拡散されたり、本人のプライバシーに影響することもあります。
報道内容や顔写真の扱いについては、必ず事前に確認・了承をとるようにしましょう。
どうして?
メディアの協力は、一度に広範囲の人々に情報を届けられる強力な手段です。
ただし、報道内容のコントロールが効きにくいため、“伝えたいこと”“守りたいこと”を事前に明確にしておくことが大切です。
まとめ:大切な人の「静かなSOS」を見逃さないために
鬱病による失踪は、ただの「家出」ではなく、心の限界からくる命の危機です。
「迷惑をかけたくない」「消えたほうがいい」そんな思いが、静かに、でも確実に人を動かしてしまうのです。
この記事では、失踪の背景にある心理や、家族が取るべき行動、警察・探偵・SNSの活用方法まで、現実的かつ具体的な対応策をお伝えしました。
いちばん大切なのは、「気づいてあげること」。
そして、「焦らず、でも決して放っておかないこと」。
心が限界に近い人ほど、何も言えずに、そっと助けを求めているのです。
あなたの「おかしいな」と思った直感が、命を救うサインになるかもしれません。
どうか、大切な人の小さな変化に、耳と心を傾けてください。
Q&A:よくある質問と回答
Q1. 警察に「まだ事件じゃないから」と断られたらどうすれば?
A. 「特異行方不明者」として扱ってもらえる可能性があります。
精神疾患がある、自殺のリスクがある、薬が必要などの事情を具体的に説明することで、警察も動きやすくなります。
対応に納得できない場合は、別の警察署に相談することも検討しましょう。
Q2. 探偵って信頼できますか?悪徳業者もいるって聞きました…
A. 残念ながら、悪質な業者も存在します。
依頼する際は、探偵業届出証明書の有無や、料金体系の明確さを必ず確認してください。
口コミサイトや過去の調査実績も参考になります。
不安なときは、消費者センターに相談するのも有効です。
Q3. SNSでの拡散って本当に効果ありますか?
A. 実際に目撃情報が寄せられて発見された例は多数あります。
特に若い世代や都市部では、SNSの拡散力は非常に強力です。
ただし、情報の正確さとプライバシー配慮は必ず守ってください。
Q4. 失踪者が戻ってきたあと、どう接したらいいですか?
A. まずは無事に戻ってきたことを喜び、責めないことが何より大切です。
「どうして黙っていなくなったの?」ではなく、「帰ってきてくれてありがとう」の気持ちを伝えましょう。
その後、専門機関と連携してサポートしていくのが理想です。
Q5. 家族に精神的な問題があっても、普段は元気そうに見えます。見分ける方法は?
A. 鬱病は「笑顔で隠す」ことができてしまう病気です。
いつもより口数が減った、疲れている様子が続いているなど、ちょっとした違和感を見逃さないようにしましょう。
「最近どう?」と聞くだけでも、本人の心に届くことがあります。